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「オペラ座の怪人」に惑う『ベルばらとの共通項~閑話休題その7』

「オペラ座の怪人」に何故惹かれるのでしょう?
印象的なシーン、仮面を剥すモチーフを見るのに
「ベルサイユのばら」を紐解き、久しぶりに通して読みました。
今年は1755年生まれの主要人物の、生誕250年だそう。

初めて読んだのは小3のころ。
それから何十回読み返したか知れない、少女漫画の金字塔。
よき本は読む度に発見があるもの。
セリフのひとつひとつ、ト書きの細部まで覚えているつもりの
この作品にもやはり新たな気づきがありました。
そして「オペラ座の怪人」との共通項にも。

はじめに惹かれたのはアントワネットの豪華な装いと美しい言葉に。
次はストイックに男性としての仮面を被り、壮絶な人生を生きる
オスカルの悲しみと魅力に。
そして黒衣のエリザベートの、若さと美を求め続ける妖しさに。

「ベルばら」には番外編として登場するエリザベート。
実在の女性がモデルで、若い女性の血に身をひたすことで
永遠の美しさを保とうとしたヴァンパイア的人物。
彼女の狂気には、ファントムの行動など
可愛らしいものとさえ思えるのですが
城に引き篭り、機械仕掛けの人形を作らせて共に暮らし、
薔薇を使い、夜を愛し、己の美を完成させるのなら
他を脅かしてもかまわないといったところ。
まるで「オペラ座の怪人」とのパラレルワールドを完成するために
配されたかのよう。

「ドラキュリア」での美しさと演技を認められたことも、
バトラーがファントムに選ばれた理由だそう。
永遠の美しさ若さ完璧さを求める神に背く
異形のヴァンパイアが儚く散る姿が、
ファントムに重なる部分があるからなのでしょう。

白馬の騎士、ハンス・アクセル・フォン・フェルゼンと
黒い騎士にまでなったアンドレ・グランディエの献身にも。
彼らは女性に比べれば地味な役回り。
その良さがわかるまでには長い時間を要しました。

オスカルを美しき女性としてとらえるためのキャラクター、
求婚し身を引いてゆくジェローデルの分かりやすい献身には
かえってすぐに気づき端役の魅力を発見する愉しみは
得ていたのですが。
(美を崇め、振られる男性に惹かれるのも
このあたりがルーツのようです☆)

アントワネットの仮面を剥ぐことから恋に落ち、
以来アメリカの独立戦争や
自国の紛争に身を投じて距離を置こうとしながらも、
最後まで静かに愛し続けるフェルゼン。
夫であるルイ16世の信頼さえ獲得し、王家のヴァレンヌ逃亡まで
命を賭して献身する。
アントワネットが断頭台の露になったあとも結婚はせず、
世を捨てたようになる。

オスカルに思慕を抱きながらも身分の違いから
自分の気持ちをずっと抑え続けるアンドレ。
彼女の頼みで犯罪者を捕らえるために髪を切り、
仮面をつけて変装したあげく視力さえ失う。
影のように従い、献身を捧げ、ついには一人の男性として
オスカルの前に立ち上がる。
バスティーユの戦闘で彼女をかばって亡くなるのも本望。

オペラ座の怪人での、ラウルもこうした役回り。
献身と勇猛果敢さを併せ持つのは、男性として大きな魅力。
「強くなければ生きてゆけない、優しくなければ生きている資格がない」
女性として幸せになるならば、貴婦人に献身し、危険から救い出し、
勇敢に闘い、リードしてくれるホワイトナイトを。

さて、アントワネットが夜な夜なオペラ座に通い、
贅沢三昧に過ごしたのは、故郷を離れ一人異国に身をおいた寂しさと、
ルイ16世の身体的欠陥から長い間子供に恵まれなかったことも
原因とか。
それがフェルゼンに会い恋することを知り、母となってからは落ち着き、
さらに革命の炎にさらされることによって目覚ましく成長する。

軍服に身を包み、恋をあきらめ、定められた運命に泣く日もあった
オスカルも、男性からミューズとして扱われることで女性性に目覚め、
また激動の時代の中で思想や芸術に触れ、
理想と共に生きられたことを感謝する。

「オペラ座の怪人」のヒロイン、クリスティーヌが
ファントムによる才能と女性性の目覚めと
ラウルによる満ち足りた生活で、
大きく花開いていく予感に重なる部分も。
現世でしっかり才能も女性性も母性も内に秘めた愛も味わうには、
陰と陽、双方のパートナーとの出会いが必要なのでしょう。

アントワネットとフェルゼンが交わした指輪に刻まれた言葉、
「臆病者者よ、彼女を見捨てるものは」
「一切が私を御身がもとへ導く」。

ラウルがクリスティーヌに、またファントムが返した指輪に
篭められた思いとは?

物語の虚構と歴史の舞台が交差する。
何度も映画化、舞台化され、蘇る。
人々を魅惑してやまないエッセンスがどこにあるのかを
学ぶにふさわしい二作品。


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