「オペラ座の怪人」に惑う・『シャーマンとしてのファントム ~閑話休題11』
スーザン・ケイの「ファントム」、お読みになった方はいらっしゃるでしょうか?
原作を丁寧に裏打ちし、ファントムの生い立ちから
クリスティーヌとの別れまでを描いています。
醜悪な容貌のため、母の愛を受けられなかった彼が何度か出会う
心ひかれる女性にことごとく拒否されてゆく。
彼が善悪の区別がつかず、人を簡単にあやめるのも、欲求不満からくる
一種のヒステリーといっていいでしょう。
抑え難い情動を保ち、仮面の下に官能をたたえてゆくさまは、
禁欲的な修行僧のよう。
ミュージカルや小説ではファントムは40-50代の設定。
さらに原作や「ファントム」ではクリスティーヌと別れたあと
すぐ亡くなってしまいます。
映画でのジェラルド・ファントムは30代。
仮面をとっても許される人間的容貌の上、
ラウルのウィルソンとも実年齢がほぼ同じ。
ゆえにクリスティーヌがラウルを選んだことに何故?と思われる向きも
多かった模様。
これが死期の近い、人間離れした容貌のファントムならば
クリスティーヌを手放すのも、ラウルをクリスティーヌが選んだのも、
もっと納得しやすくなるでしょう。
ただしその設定では、これほどまでに惑う方々は
いなかったと思われますけれど。
さて、スーザン・ケイの小説には実家を飛び出したファントムがジプシーと
放浪しているときに、薬草の知識を身に付けた、という描写があります。
知識を洗練させ、学んだものよりさらに効果のある薬を作ったと。
煎じ薬を入れた「小ビン」で、何人かの人々を救ったという魔術師・ファントム。
その処方が知りたくて、夢にまで出てきそうです。
いったいどこまで傾倒させる気なのでしょうか。
ファントムもハーブとの正しい関係を保ち続けていたら、もっと早く
平安を手に入れることができたでしょう。
痛み止めや若返り水、媚薬などを求めて人々が引きも切らずやってきて
皆に安らぎを与え、受け入れられたはず。
仮面やマントもそういった役回りならやがて許されたことでしょう。
「ショコラ」のヒロインのように。
人心を騒がせるマジシャンではなく、彼が求めていたものと同じものを与える
シャーマンかメディカルマンとして生きていたらと、残念でならないのです。
☆「ショコラ」のジョニー・デップはエクセレントですね。
僕もそうおもうよo(炎_炎)o ウォオオオッッ!!
by クリスtぃーぬ (2007-01-25 18:01)