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「オペラ座の怪人」に惑う『受胎告知~閑話休題 その12』

オペラ座の怪人のパスティーシュ、「マンハッタンの怪人」と「ファントム」の
内容に触れますのでご容赦を。

フォーサイスとスーザン・ケイは、ともに作品の中でクリスティーヌに
ファントムの息子を宿らせています。

「血の繋がった子孫を残す」ことそのものがサバイバルと言われる文化では
ファントムの豊かな資質は残されてしかるべき、という思いが
二人の作家には強かったのでしょうか。

映画では、ファントムが二回目にクリスティーヌを地下に連れてきたとき
次のセリフを言ってベールを被せます。

This face, which earned a mother’s fear and loathing.
A mask, my first unfeeling scrap of clothing.

"Down Once More/Track Down This Murderer”

「母までもが恐れ、忌み嫌ったこの顔
 仮面という 私が最初に纏った惨めな被服」
 
母に拒否されたファントムが黒い舞台衣装から花嫁衣裳に着替えた
クリスティーヌに被らせるベール。
彼女にとってはこのベールこそ、unfeelingなものに感じられたとみえ、
すぐに頭から取り除けていましたけれど。

生きた聖母像を完成させるためにファントムがクリスティーヌに
ベールを被せたのなら、このシーンは受胎告知とも言えるのではないかと。

大天使ガブリエルが、処女マリアにキリストの受胎を告げる、
福音書の有名な場面。
別名「復讐の天使」「死の天使」「真理の天使」とも言われ、
ローマを滅ぼすという神の命を履行しなかったため、堕天使として
天界から追放されたこともある大天使ガブリエル。

美しきものを愛で、地下に住まうファントムのイメージと、
それほどかけ離れていないでしょう?

クリスティーヌがファントムに対した言葉、

Angel of Music!
Guide and guardian!
Grant to me your glory!

“Angel of Music”

こちらなど、angelの役割をもってすれば、非常に意味深になり得ます。

That fate, which condemns me to wallow in blood
Has also denied me the joys of the flesh . . .
This face, the infection which poisons our love . . .

"Down Once More/Track Down This Murderer”

「血に溺れるように宣告された運命の私には
 肉体の喜びなど無縁のもの。」
 
ミュージカルの舞台にヒントを得て書かれたという二作品と
このファントムのセリフとの矛盾も、処女受胎の考えからいけば
納得できるということでしょうか。

オペラ座の怪人の詩に見てとれる宗教用語やモチーフは、
二人のキリスト教圏の作家のイマジネーションを聖母子像へと
向かわせたのかもしれません。


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euridice

「受胎告知」の絵は、なんというか、平和な静寂感があって好きです。

「ドラキュリア」見ました。バトラー、ほんとに、美しいです。知らなかったら、彼だとわからなかったかもしれません。ファントム、アッティラとは違う美しさですね。ドラキュリアの正体、けっこう意外でした^^; ルシフェル(ルシファー)あたりかななんて予想したんですけど、見事に外されたって感じです。ルシフェルだったら、棺桶に閉じ込められたりしませんよね・・・
by euridice (2005-11-01 08:42) 

ayakawa

euridiceさま、こんにちは。

ウフィツィ美術館で観た受胎告知、天使の口から金箔の文字が溢れているという構図で、なんと直接的な表現だろうかと思いました。

「ドラキュリア」、ご覧になられたのですね。
そうなんです。ご覧になった方々は皆さま、「知らなかったら、彼だとわからなかった。」という感想をお持ちになるんです。もちろん、私も。おっしゃるように、毎回違った美しさを見せてくれるのが、バトラー氏なんです☆
「タイムライン」や「トゥームレイダー2」「Dearフランキー」はお髭がありますが、アッティラともまた違った魅力があります。

「ドラキュリア」という作品に出ていることを知り、観る前にユダとファントムの共通項を書いたので、実際に鑑賞したときは本当に驚くやら嬉しいやらで。
ルシフェルもいいですね、あの美しさですから。棺桶には、気が向いたら入ってくれるかもしれません☆
by ayakawa (2005-11-12 09:42) 

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