SSブログ

「オペラ座の怪人」に惑う・「パンとワインと愛~閑話休題その9~」

ロック歌唱のファントムはALWの出世作・
「ジーザス・クライスト・スーパースター」を思い起こさせます。

「ジイザアァァース!」と切なげにロック歌唱で叫ぶユダ。
愛を独占したがる姿に、何故か「ベニスの商人」の、アントーニオの
flesh・1ポンドを欲しがったシャイロックの姿が重なりました。

友人のバッサーニォーの代わりにユダヤ人・シャイロックから
3000ダカットを借りる商人・アントーニォ。
担保に身体の肉1ポンドをと言われ、気軽に承諾するも、
全財産を積んだ船が難破。
裁判となり、いよいよシャイロックの刃がアントーニォに向かった時、
裁判官(実はバッサ-ニォの妻・ポーシャ)の声が飛ぶ。

Cut your flesh, but spill no blood, then.

“Cinna’s Easy Plays from Shakespeare  
       THE MERCHANT OF VENICE”

「肉を切りなさい、ただし、血は流すな。」

就学前に読んでいた「ベニスの商人」に高校の英語の授業で再び出あったとき、
fleshにやたらにこだわるシャイロックが
実はアントーニオを愛していたという演出もあり得るかも、と思っていたのです。

お金の担保にfleshを求めるシャイロック、
本当はアントーニォ(または彼が属する世界)への憧れ、
愛が欲しいのではないかと。
ジーザスを売ったユダも、欲しいのはお金ではなく愛。
それはより、肉欲に近いものではなかったかと。

flesh&bloodで人間と聖書に訳されているそう。
また最後の晩餐においてジーザスはパンを自分の肉とし、
ワインを自分の血として与えています。

bloodとfleshという言葉、「オペラ座の怪人」にも出てきますね。
Christine:
Have you gorged yourself at last
in your lust for blood?
Am I now to be prey
to your lust for flesh?

Phantom:
That fate, which condemns me to wallow in blood
Has also denied me the joys of the flesh . . .
This face, the infection which poisons our love . . .

"Down Once More/Track Down This Murderer”

「あなたの血への欲望はついに満たされたの?
 私はこれからあなたの肉欲の犠牲になるの?

 血に溺れるように宣告された運命の私には
 肉体の喜びなど無縁のもの。
 この顔はそなたとの愛を蝕む病。」

このセリフ、ユダやシャイロックと比べてみても興味深いと思います。

fleshとblood、両方揃っての、神に愛されるべき人間。
血を流させているファントムは、
すでにシャイロックやユダと同じ位置に堕している。

またfleshはパン、日常を形作るもの。
bloodであるワインは、精神を高揚させ、日常を豊かに彩るもの、
アートに似ています。

人はパンのみにては生きられない、ワインが生きる喜びを与えなければ。
ただ、ワインに浸って生きていたようなファントムには、陽の光と同じく、
パンを意味するfleshなどまぶしすぎる。

けれど本当に求めているのはbloodとfleshの先の届かぬ愛。
やはり哀しきドラキュリア。
魅入られた方は知らず知らずのうちに、
彼のワインを飲み干していたのかもしれませんよ。

そんなファントムの映し身、ALWヒットの前身たる作品、
機会があればどうぞご覧になってみてくださいね。

☆「ヴェニスの商人」の映画もアル・パチーノ主演で、10/29公開です。


nice!(0)  コメント(2) 
共通テーマ:映画

nice! 0

コメント 2

euridice

>「ジーザス・クライスト・スーパースター」
いいですね! 発表当時、キリストの描き方が、相当問題になったような記憶があります。そのころから気になっていたんですが、?十年後になって、やっとノーマン・ジュイスン監督の映画(1973年)を観ることができました。この映画、お薦めです。曲ではゲッセマネが一番好きです。
by euridice (2005-10-25 10:02) 

ayakawa

euridiceさま
こんにちは!
ALWのジーザスのことを知ったのは小学生のとき、黒柳徹子さんの「チャックより愛をこめて」というエッセイの中の描写でした。キリストがマイクを持ってロックを歌いまくり、十字架が客席にまでせり出す20代の若い人たちが作ったミュージカルと。

ノーマン・ジェイスン氏の作品は学生時代に、ゲイル・エドワーズ氏の作品は今年になってから拝見しました。
四季のミュージカルの初体験がジーザスのジャポネスク(歌舞伎)・バーション。
子育ての最中しばらく舞台鑑賞から離れ、再び劇場通いを始めたきっかけが
エルサレムバーションでした。

私は幕間狂言のように突如現われるヘロデ王が好きで。歌舞伎バージョンでは隈取りも鮮やかに舞妓姿の女性を従がえ、かぶいておられました。
エルサレムバージョンでは下村尊則さんが演じておられたのを観ましたが、一目でよい役者さんだと思いました。
by ayakawa (2005-10-25 13:30) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。